日本人と着物

Written by rokushou

 皆さんこんにちは、京町家コテージkariganeという宿を運営している下岡広志郎です。

 私はかつて、妻とともに世界一周の旅をしました。大まかには、ラテンアメリカからスタートしてアフリカ、ヨーロッパ、中東からシルクロードを経て中国、そしてネパール・インドというルートで、40を超える国を巡りました。

 その先々で、個性的な『民族衣装』に出会うのは、旅の醍醐味の一つでした。特に印象深かった国は、グァテマラです。男性はジーパンにポロシャツといった洋服を着ていることが多いのですが、女性、特に年配の方々は今でも民族衣装を着ていらっしゃいました。

色とりどりの民族衣装。

 グァテマラの民族衣装、と一言で言っても、多種多様です。私たちが2週間ほど滞在したアティトラン湖周辺には、小さな村がたくさん点在していて、その村ごとに、それぞれ違うデザインの民族衣装がありました。鳥の刺繍が布一面に散りばめられた鮮やかなもの、花のモチーフ、あるいはインディゴブルーを基調としたシックなものもありました。

花、鳥、幾何学模様。

 ただ、多種多様と言えど、一目見て『グァテマラらしいな』と感じるような共通点もあります。どの村の衣装も、眩しく照り付ける太陽に映え、目の大きい、黒い髪の、小麦色に焼けた肌に似合うような色調、デザインになっていました。

同じ、ようであっても、少しずつ違う。

 民族衣装を身にまとう女性達は、本当に美しかった。例えば、ある一つの村でお祭りがあると、村の女性がみんな同じデザインの衣装で広場に繰り出します。しかし女性は世界中どこへ行ってもオシャレなものですから、ちょっと他の人とは違うアクセントを盛り込むわけです。髪飾りだったり、ブレスレットだったり。

 皆で同じものを着るというユニティやハーモニーと、人とは違うものを盛り込むというユニークネスやアクセントが絶妙に共存する風景は、『ああ、こういう風景が見たかったんだ』という気持ちにさせてくれました。

 翻って『洋服』とは、とても便利なものです。一枚たりとも『洋服』を持っていない、着たこともない、なんて人は、日本に限らず世界中を探してもなかなか巡り合えないでしょう。

アウトドアが好きなので、必然的にそういう洋服が多いです。
サイクリングも好きですが、やはり和服で自転車に跨るのは憚られます。

 自分も『洋服』は少なからず持っています。ですが『和服』は一枚たりとも持っていませんでした。着る機会も、七五三と結婚式でレンタルの着物を着たことがあるくらいで。

 世界一周して、それはとても退屈なことだと思うようになりました。地球上にいるすべての人が洋服ばかり着ている世界だなんて、何か変だと。『日本人なら和服以外を着るな!』とは思いませんが、『日本人なのに和服を持っていない、着たことがない』というのは、やっぱり違和感があるなと。

 幸いにして自分は、ひと昔前の平均的日本人体型ですので、自分にフィットする上質な中古の和服が、わりと簡単に見つかります。特に京都では、東寺や北野天満宮の骨董市に行けば、大型ショッピングモールに必ず入っているファストファッションブランドでシャツとパンツを買うよりも、よほど安く全身コーディネートができます。

 そうして手に入れた和服を着て、姿見の前に立って自分を映してみると、『ああ、やっぱりこれだな。』と思う訳です。グァテマラで見た風景と同種のものを、鏡に映る自分自身にも感じられます。

やはり日本人は着物だな、と実感します。

 『和服』というと、日ごろの手入れに手間がかかり、何かと決まりごとが多く、高価というイメージがあります。つまりは、めんどくさい。

 しかし普段着のルーティーンの中に、和服を混ざりこませてしまえば、それほど手間もかかりません。ジーパンにポロシャツと同じです。着物用のハンガーがあればベターですが、高いものではありません。また、衣替えの時期にはきちんと畳まなければいけませんが、ネットで動画を検索すればすぐに見つかります。帯の結び方も、やはりネットで検索。つまり、思っていたようなめんどくさいことはありません。

 例えば私のように中古の着物を買う、あるいは祖父母、もしかすると中には近所のおっちゃんおばちゃんの着物を譲り受けて着るなんてこともあるかもしれませんが、そんな時、心配なのはサイズ感でしょう。確かに、自分のために誂えたようなぴったりフィットのものは、なかなか見つからないかも知れません。多少は袖や裄が長かったり短かったりすると思います。しかし文字通り和服は懐が深いので、ある程度はごまかせます。新品を誂えれば当然安くは済みませんが、普段着用であれば中古で十分、良いものが手に入る印象です。

 また洋服なんてない時代は、掃除も洗濯も和服で行っていたはずで、ちょっとそこらへ買い物に行く、なんて程度の時は、それほど畏まって和服を着ていたわけではないはずです。それぞれが自由な趣向でオシャレを楽しんでいたはずです。と、色々と勝手に拡大解釈して、自分は和服にキャスケット帽、アフガンストールなんて呼ばれる布をマフラーにして、足元は登山靴です。もちろん、この格好で式典に出るわけにはいきませんが、カフェに行くくらいなら、これでいいんじゃないでしょうか?

気軽に着物で、ちょっと喫茶店へ。

 Kimonoを着る、Kimonoを買う、ということは、海外から日本に来られるお客さまが最も楽しみにしていることの一つです。彼らのKimonoに対するスタンスには、時にハッとさせられることがあります。日本人は『和服』に対して、変な先入観を自分たち自身に植え付けてしまったのかも知れませんね。

 皆さんも『和服』を一着、ワードローブにいかがでしょうか?

kariganeにて、お待ちしております。

こちらの記事は、japanlivingarts.comに寄稿されたものを、加筆訂正し再編集したものです。  https://jp.japanlivingarts.com/


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